俺がきみの一番になる。
「まぁ、亜子ちゃんはほっぺにチューぐらいでうろたえねーだろ。今度は絶対唇にしろよな。それより、修学旅行先でまさか朱里ちゃんに会うとはなぁ」
「あー……だな」
「なんだよー、興味がなさそうなその反応は! 仮にも昔好きだった相手だろ? 熱が蘇ったりはしねーのかよ?」
「ねーよ。俺、過去は振り返らないって決めてるから」
「なにカッコつけてんだよ。すっげー好きだったくせに」
「昔のことだし」
そうだ、昔のことだ。それに、朱里にはちゃんと告白してきっぱり振られてる。
だからもう、俺の中ではちゃんと昔のことになっている。
それよりも今は、亜子のことでいっぱいで。
「亜子ちゃんと朱里ちゃんって似てるよなー。俺的には亜子ちゃんのがピュアでまっすぐだから好きだけど。朱里ちゃんはほら、男心をくすぐるツボを心得てる感じで駆け引きがうまいよな。打算的で狙ってやってんのがバレバレだし、かわいいとは思うけど俺のタイプではないな」
「似てねーよ。それに、おまえのタイプとか聞いてない」
外見だけなら、最初はたしかに似てるって思った。でも、中身は全然似てねー。
「ウブなおまえはその罠にハマって……」
「うっせー、罠とか言うなっつーの。朱里のことは、もう思い出したくないんだよ」