俺がきみの一番になる。
明らかに窮地に立たされているというのに、本田君は少しだけ振り返って、私を安心させるように小さく微笑む。
「だ、だけど……」
五人もいるんだよ?
「柳内さんは、もっと離れたところにいて。まだ走れる?」
「え、あ……」
ど、どうしよう、足に力が入らない。
こんな経験は初めてで、すごく動揺している。
「てめぇ、さっきからごちゃごちゃ言ってんなよ!」
「のんきに会話なんかできなくさせてやるよ! ふざけやがって!」
男たちが本田君めがけて飛びかかってくる。
「そこの角を曲がれば大通りに出られるから、安全なところにいて」
本田君は百メートルほど先の角を指差して、すばやく私にそう言う。
そしてすぐ前に向き直った。男たちは本田君のすぐ前まで迫っていて、一人が本田君の胸ぐらを掴んだ。
恐怖で足が動かなくて、助けを呼ぶこともできない。
「ふざけやがって! 痛い目にあわせてやる」
「はは、やれやれー。フルボッコにしてやろうぜ」
「最近むしゃくしゃしてたしな」
四方を囲まれていて、明らかに不利な状況。グッと堅く握りしめた男の拳が、本田君めがけて飛んでいく。
あっ!
殴られる!
そう思った瞬間、私は両手でとっさに目を覆ってしゃがみこんだ。