俺がきみの一番になる。

数日後、ここのところ梅雨のせいで雨続きだったから、昼休みは中庭で過ごせなくなった。

仕方なく今は、教室でお弁当を食べている。ひとりぼっちはさみしいけど、もう慣れた。

いつものようにお弁当を食べたあと、トイレに立ち寄って教室に戻ろうとした時だった。

「ねぇ、ちょっといい?」

教室の前まで来た時、怖い顔で腕組みしながら立っている沢井さんに呼び止められた。

沢井さんは一人でどうやら私を待っていたみたい。

「話しがあるの」

明らかに私を敵対視しているような鋭い視線。

なんで呼ばれたのかピンときたけど、気づいていないフリをして首を傾げてみせる。

「話……?」

「いいから、ちょっときて」

「え、あ……」

無理やり腕を掴まれて、人気のない階段の踊り場まで連れて行かれた。

沢井さんは今日は髪をサイドで結んでいて、うっすらとメイクもしている。だからなのか、普段にも増して目元がきつく見える。

にっこり笑えばすごくかわいいのに、なんてこの状況でそんなことを思った。

「草太と付き合ってるの?」

「え?」

予想通りだったけど、こんなに直球で聞かれるとは思ってなかった。

「付き合ってるのかって聞いてるの」

イライラしたように語尾を強める沢井さん。

「付き合って、ないよ」

「じゃあ、なんでいつも一緒にいるの? 元から仲が良いわけじゃなかったよね?」

「そ、それは、最近友達になったからで……」

ほかにどう言えばいいかわからなかった。まさか告白されただなんて言えないし……。

「……しないで」

「え?」

「草太と仲良くしないで!」

沢井さんの怒りをにじませた声に、心臓が縮み上がりそうになる。

言い返せずに黙り込んでいると、再び沢井さんが口を開いた。

「あんたとだけは、仲良くしてほしくないの。あたしから草太を取らないで」

「……っ」

言葉に詰まったのは、沢井さんの目に涙が浮かんでいたから。胸がキリキリと痛む。沢井さんはスカートをギュッと握りしめて、歯をくいしばっていた。

ど、どうしよう。なんて言えばいい?

「嫌なの、あんただけは……」

「あなた、無茶なこと言ってるってわかってる?」

返答に困っていると、突然背後からそんな声が聞こえた。その声はもちろん、私のものでも、沢井さんのものでもない。

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