俺がきみの一番になる。
「理由は知らないけど、父親に育てられてるんだから母親に捨てられちゃったってことじゃないの? さすが、男好きな柳内の母親だけはあるよね」
「あはは、似た者親子!」
よりいっそう、楽しそうになる話し声。きつく握りしめた拳がプルプル震える。
なにも……知らないくせに、なにも。
「ロクでもない母親のせいで、あんな風になっちゃったんだ? 男に媚びてますー、みたいな」
「最低な母親だよねー。もうちょっとまともに育てられなかったのかな」
クスクスと漏れる笑い声に、胸の奥が煮えたぎるように熱くなった。
私のことを悪く言われるのはいくらでも我慢できる。でもお母さんのことを言われるのは、許せない。
あなたたちが私のなにを知ってるっていうの?
どうしてここまで言われなきゃならないの?
関係ないでしょ、親のことは。そう思っても言葉には出せない情けない私。ただ黙って唇を噛みしめながら耐えるしかなかった。
とてもじゃないけど更衣室に入って行くことはできなくて、なんとなく階段を上がって屋上へ向かう。
サボることになるけど、そんなことはもうどうでもよかった。
外に出ると容赦ない太陽の熱が襲ってきた。蝉が鳴いているのが遠くに聞こえる。屋根の下の日陰に移動してその場に座り、ギュッと目を閉じた。