俺がきみの一番になる。
「あんたさぁ」
恐る恐る階段を降りて教室に向かっていると、尖った声が私の胸を貫いた。肩がビクッと揺れて、足が止まる。
目の前に立っているのは沢井さんで、どうやら私を待っていたらしい。色のない瞳。冷えきった表情。沢井さんがなにを考えているのか、まったくわからない。
張りつめた空気が増して、どんどん重苦しいものに変わっていく。立ち尽くしていると、一歩、また一歩と沢井さんが近づいてきた。
「どういうつもり? なんで草太に近づくの? あれほど、やめてって言ったよね?」
「そ、れは……」
どう言えば納得してもらえるんだろう。わかってもらえるんだろう。許してもらえるんだろう。
わからないけど、これだけはわかる。
きっと、なにを言っても沢井さんは許してくれない。最初から私を許す気なんてないってこと。
「あんた、片親らしいじゃん。父親に育てられたから、甘えるのも上手だよね。そうしていれば、男がなんでも言いなりになるって思ってる? さっきだって、草太に助けてもらってバカみたいに嬉しそうにしちゃって」