ボクは初恋をまだ、知らない。

「太陽先生の事、好きなんだ……。」


ひと粒の涙が、手の甲に跳ねて消えた。

声に出すと、

思い出していた太陽先生の優しい笑顔が、

胸の中でじわーっと
浸透していくような気がした。

「千景、初恋おめでとう。」

薫がボクをギュッと抱きしめた。

「うん………。」

「父さんは嬉しいぞ!!」

「あたしも便乗ー!」

啓介とるなもハグしてきて、
何だか初めて誕生日を迎えた時のような気分になった……。


ーーーーーーーー

「啓介ありがとね!仕事頑張って。」

空も暗くなってきたので、
ボクらは家に帰る事にした。

薫と啓介に手を振って、
るなをボクの家につれて帰る。

ーーーー

「やっとだね、千景。」

見送ってくれた薫が呟く。

「あぁ。でも、相手はオレンジ頭の
イケメン教師だぞ。」

「え、先生だったの?!それ大丈夫?」

「……失恋してピーピー泣きついてくるかもな。」

「……見守ろうか。」

2人はそんな会話をして、
たこ焼き屋さんに戻って行った。






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