クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。


慌ててプールの方へ駆け寄って、水面を覗く。



「早凪くんっ!」



そう名前を叫んだと同時に、プハッと思い切り息を吐く音がして、全身ずぶ濡れになった早凪くんがひょっこり顔を出していた。


間違えて落ちたにしては、あまりにも爽やかな顔すぎて違和感。


プチパニックの私をよそに、早凪くんは濡れた前髪をかきあげて、こちらを見上げながらぷかぷかプールに浮かぶ。


「な、何してるの?!」


「何って、見てわかんない?溺れてる」


「……いや」


溺れてる人間はそんなに落ち着いていられないって。


「ねぇ、ゆる。俺、溺れてるんだけど」


「どう見てもそうは見えないよ」


彼の濡れた髪の毛先から、水が滴って、妙に色っぽく見せていて変な感じ。


夜の月明かりとか、落ち着いた照明とか。


彼を好きだと認めて意識しているからなのか、いつもと違う雰囲気で気持ちが高鳴っているからなのかわからないけれど、いつもの何倍も恥ずかしくって、目をそらす。


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