クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。
「俺が溺れてるって言ってんだから溺れてるの。助けて?」
「うっ……」
莉々ちゃんと話す早凪くんとは別人で、やっぱり自由人で勝手だ。
彼女と話すときはどこか大人なくせに。
「ゆる」
早凪くんは、私の名前を呼んで濡れた手を伸ばす。
久しぶりに名前を呼ばれて、胸がギュッとなって。
こんな気まぐれな彼のことを好きになってしまって、気持ちを振り回されてるのが悔しい。
悔しい、のに。
彼に触れてもらえると思うと嬉しくて。
莉々ちゃんにもどうせこんな風に触れている、わかっているのに。
彼の方にゆっくりと手を伸ばす。
っ?!
「さ、早凪くん?」
プールから引き上げるために手を伸ばしたのに、早凪くんは、私の伸ばした手に、自分の指を絡めてきた。
「ゆるの手、久しぶり」
「……っ、」
いちいちドキドキするようなことをしてきて、そんなことを言う彼は、確信犯だ。
私がこういうのに慣れていないのわかってて、面白がってるに決まってる。