クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。
「ゆるの手、小さいね」
「早凪くん、上がる気ないなら離してよ。濡れちゃう」
『溺れてるから助けて』なんてすぐわかる嘘でわざわざ引き上げてもらおうとしたのは早凪くんの方なのに。
「……濡れちゃえば」
早凪くんはそう言って再び水の中に潜り出す。
「えっ……ちょっ!」
水の音が消えて、あっという間にしんとなった空間。
水の中には早凪くんがいるはずなのに、まるで急に1人になったような。
「ふざけないで早凪くん。私もう行くよ」
「……」
かまってちゃんにもほどがある。
莉々ちゃんがいるんだから、莉々ちゃんに相手してもらえばいいのに。
「早凪くん、いい加減に……」
注意しながらも、あんまり静かなプールに、なんだか怖くなる。
長く、ない?
いくら悪ふざけとはいえ……。
普通の人間がどれくらい息を止めてられるかわからないけれど、早凪くんが水の中に入ってからすごく時間が経ってる気がして。
「早凪くん?ねぇ……」
「……」