クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。


「え〜円さん何言ってるんですか?」


莉々ちゃんは、眉毛を下げながら、上目遣いで円のことを見つめる。自分の可愛い角度を全て把握してるって感じで。


「とにかく、私はあなたのことが昔から大嫌いだから、それだけ覚えてて?」


廊下を少し進んで、部屋のふすまを開けながらそう言った円に、莉々ちゃんの顔が明らかに変わった。


「もしかして、円さんって、早凪のこと好きなんですか?」


紙袋から浴衣を取り出した円の手が、わずかに止まった。


「別に……」


「あ、それとも、翼くんか瑛斗さんのどっちかですか?」


毛先がクルンとなったツインテールを揺らしながら嬉しそうにそういう莉々ちゃん。


私が言われてるわけじゃないのに、すごく気分が良くない。


「やめといたほうがいいですよ?みんな、莉々のことが好きなんで」


「はー?なんなのあんた!」


「ちょ、円!」


声を荒げた円を慌ててなだめようと、彼女の肩に触れる。


円が怒るのも無理はないけれど、莉々ちゃんはどこかわざと煽るように言ってるようにも見える。


自分が言われてる時は気付かなかったけれど。


今、客観的に見ると、少しだけそう感じた。


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