クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。
人の流れに逆らいながら、さっきみんなと進んでいた方向とは真逆に向かって人混みをかき分けながら、目線を下に向けつつ道を歩く。
「すみません、ちょっとすみません」
と、何度も声を出しながら。
どうしよう……。
これだけの人の数だ。
踏まれてボロボロになって壊れてたりしたら。
誰にも気付かれないまま、どんどん転がされて、どこか遠いところにあったら。
見つけられるか不安になりながらも、とりあえず、通ったばかりの道をひたすら戻って。
見つけなきゃ、翼くんの、優しさ。
悔しさで、目が熱くなりながら、必死に目を凝らして。
でも、見えるのは、見知らぬ人たちの足元やポイ捨てされたゴミばかり。
もうダメかも……。
そんな弱音を思った瞬間だった。