クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。
「……なにしてんの」
「……っ?!」
突然、後ろから手首を掴まれたかと思うと、聞き覚えのある声がした。
しかも、すごく不機嫌そうな声。
声を聞いただけで、胸がギュッってなるのがすごく悔しくて。
「……さ、早凪くん?」
恐る恐る振り返ると、やっぱりそこには早凪くんがいて。
額に少しだけ汗が滲んでいて、息が荒いのを見る限り慌てて探してくれたんだっていうのが伝わってくる。
「なんで……」
「なんでって……ゆるってそんなバカだった?」
「えっ、バ、バカって……」
今日、ちゃんとしゃべったのに、かける言葉が『バカ』って、もっとマシなセリフはないんだろうか。
バカなんて、自分でも一番自覚しているし。
「みんな心配してる、門枝さんなんて連絡つかないって泣き出したんだからね」
「えっ……」
円……そんなに心配して……。
「翼だって、すっげー青ざめた顔して自分がちゃんと見てなかったからって」
「それは違う!!翼くんのせいなんかじゃないよ!!」
私が、少し声を大きくしてそういうと、早凪くんの表情が何故だかムッとした。