だから何ですか?Ⅲ
帰るわけないと宣言した眼差しは自分でも狂気も混じった鋭い物だと気が付いている。
そんな俺に至近距離に詰め寄られ驚愕に双眸を見開く亜豆の心中はどう乱れているのか。
どんな葛藤で俺を見つめている?
それを探るべくではないけれど。
「っ・・・・」
掴んでいた手をそっと静かに口元に引き寄せると口づける。
そんな接触にピクリと指先が動き小刻みに震える手は何を思ってなのか。
震えているくせに引き戻す事はせず、ただこの後何をされるのかと言わんばかりに瞬きを忘れた両目が飢えた俺を映しこんでゆらりと揺れる。
相変わらず・・・一気に食らいつきたくなる無自覚な誘惑だ。
それでもそんな欲求はさすがに抑え込んで、掴んでいた腕をスルリと滑らせ指同士を絡ませ直しながら手の甲に口づけを繰り返す。
どうしていいのか分からないらしい亜豆の指先がピクリピクリとキスする度に動くことが愛らしい。
表情に不安は健在なのにまんざらでもない扇情差も垣間見えて、思わずそれに誘われほんの軽くキュッと歯を立てればそれが正気付け。
ハッとしたように俺の手から逃れると、そのまま捕まらぬように足早に歩きだした後ろ姿にクツリと笑い。
「俺を飢えさせたんだから覚悟しろよ、」
「っ!?」
「・・・・・お前の事情なんて知らねぇ。隙見て食らいつく気満々だから覚えてろ」
宣戦布告。
珍しく驚愕する姿にしてやったりと勝ち誇ったように口の端を上げた。