だから何ですか?Ⅲ
確かに海音が言っていたように眉目秀麗だの言われるわけだと今思った。
近くにいた女子社員がまさに今色めき立った感じに小声で騒いで通り過ぎていった。
そんな女子社員にも他に通り過ぎる男性社員にも自ら振り返り『お疲れ様』なんて声を響かせ笑みを見せる姿は優男。
そうして他に向けていた視線をゆっくりこちらに戻すと、再びこちらに問いかけるようにチラリと亜豆を見てから俺に移す。
よくよく考えれば社員でない男が社員の女子を壁に追い詰めキレていたシーンだ。
声をかけて当然とも言えた状況だったと改めて思って息を吐き、静かに亜豆を押さえ込んでいた手を離すと、
「いえ・・・すみません。別に怪しい者じゃ、・・・危害を加えようとかそういう事じゃなかったですから」
「ストーカーです」
「っ・・おいっ!?」
「自分でそう宣言されていたじゃないですか」
「お前っ、なにもこういう状況でそういう事言うか!?誤解されるだろ!?」
「誤解でもなんでもないでしょう。人が出てくるの待って朝からずっと会社の前で張って・・・立派なストーカー」
「亜豆、お前なぁ、」
「とにかく、迷惑です」
ドンッと音が響きそうな程衝撃ある突き放し。
押された場所が『胸が痛い』とか比喩的な意味でなくて本気で物理的に鈍く痛む。
そんな珍しく感情からの加減のない力の拒絶は馴染みが無さすぎて虚をつかれた。