だから何ですか?Ⅲ



玄関に亜豆の幻覚が見える。


いや、・・・訂正。


玄関に、もの凄く驚愕に満ちた表情で固まる亜豆の幻覚が見える。


むしろ・・・幻覚であってほしいとさすがに思ったこの現状だ。


でも・・・、



「っ・・・失礼・・しました」



ああ、無情・・・。



とか、・・・思って呆けてる場合じゃない。


一体なんでここにいるのか。


何の用事で、何の為に・・・。


そんな理由は後付でいい。


今はとにかくどうやら誤解が生じたらしいこの事態の改善が先だろう。


めまぐるしく思考を切り替える最中にもすでに背を向けた姿は玄関扉の隙間からスルリと抜ける。


そんな姿を弾かれた様に追いかける俊敏な体は本当にさっきまで怠さに唸っていたものだろうか?


確かに動悸は苦しい。


それでも病的な意味合いのそれじゃない。


思ってもみない来訪への興奮や焦り。


一瞬・・・、


そう、一瞬、『失礼します』と去る直前に見せた雛を捉える眼差しの鋭さ。


あれは・・・・どう見ても嫉妬の鋭さ。



『私の物に触るな!』



そんな威嚇を亜豆に感じた。


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