だから何ですか?Ⅲ



「和っ、待ちなさい!コラッ!!」



そんな雛の怒号なんてお構いなし。


構ってられるかよ!と、閉じかけていた扉を押し返してマンションの廊下にその身を出す。


すぐに捉えたのはエレベーターホールへと曲がる亜豆の後ろ姿で、舌打ちを響かせるとそれが合図の様に駆け出し全力疾走。


とはいえ、全力疾走する程の廊下の長さでもなく、すぐにエレベーターホールの角にその身を運び2つある扉の前に亜豆の姿を捉えて足を止める。


驚くことに?


チラリとこちらを捉えた亜豆は俺の姿に驚くでも怯むでもなく、ただ静かに無表情で視線を前に戻してしまった。


もっとこう、焦って逃げられる展開を思い描いていたから多少拍子抜けするな。


逃げるような動きを見せてくれたら走ってきた勢いのまま腕を掴んで引き止めて『違うんだ!』となんかのドラマ的展開に詰め寄れたのに。


実際は、上がった息を響かせて、どう声掛けしようかと迷いながらの歩み寄りなんていう様にならないもの。


しかも・・・逃げもしないけど、全然俺を見ようともしないのな。




「・・・・亜豆、・・あのさ、」


「伊万里さんってそんな性癖でしたっけ?」


「・・・はっ?」


「公然わいせつ罪で通報されますよ?」



はっ?何言って?と、視線を自分に走らせれば、確かにと納得せざるを得ない半裸状態の自分が視界に映った。

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