だから何ですか?Ⅲ




だって、そう思うんだから仕方ない。


いつだって不満ばかり愚痴ばかり、そのくせまともに仕事をしない奴の鬱憤とは物が違う。


普段は勤勉。


不満もあまり言わず他の人間の仕事の代打にも文句も言わずにやり通す。


そんな亜豆の稀な鬱憤など鬱憤の内に入らないとさえ思う。


このくらいの弱音はどんどん吐きだせばいい。



「頑張ってる奴に『頑張れ』って言うのは好きじゃないんだ。だから・・・言葉の代わりに俺のやる気パワー注入中」


「フッ・・・どうしましょう。効果覿面で笑えてしまいました」


「いいねぇ。いい傾向、」


「でも、もっとダイレクトに時短で欲しいです」



そんな言葉に視線を落とせば胸元に埋めていた顔を持ちあげ俺の唇に触れてくる指先。


それだけで意味は充分に理解してフッと口の端が上がってしまった。


『キスされたいです』


だろ?


引いていく手の動きや速さとほぼ同じに顔を寄せて、啄むように唇を重ねればお互いの吸っていた煙草の味が混ざり合う。


いつだって始まりはソフトに終わろうと思っているんだ。


なのに重ねてしまえばそんな意識は消えてしまってついついもっともっとと貪ってしまう。



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