姫は王となる。
シー…ンと、静まり返る。
「風、私は聞いてないぞ」
眉間にシワを寄せ、隣に立つ風を見上げた。
するとやっと、風と目が合った。
「西国との縁談の話や、国境に護衛兵を配置するなど私は…」
「王様、ご気分がすぐれないのでは?」
「!?」
風に文句を言おうとすると、後ろにいた老婆が目の前に膝まついた。
「老婆!今は、下がって…」
¨王様、大臣たちの前でございます¨
大臣たちに聞こえないように、老婆がとても小さな声で言った。
「…」
顔を前に向けると、大臣たちの視線が集まっていることに気付いた。
「…っ」
ギリ…
拳をつよく握り、奥歯を噛み締める。
「本日は、もう王室でお休みになられたらどうでしょう?」
老婆は大臣たちに聞こえるように、声を張って言った。
¨退室致しましょう¨
ぼそぼそっと老婆が言い、立つように促される。
「っ…」
隣に立つ風を見上げると、前を向いたまま小さく頷いたのがわかった。
「…本日の会議は終了だ」
ぼそっと言うと立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
座っていた大臣たちも立ち上がり、膝まついて頭を下げた。
コツコツ…
ヒールの音だけが、部屋に響く。
後ろから風、老婆が付いてくる。
扉の前に立っていた警備兵も頭を下げ、静かに扉を開けた。