姫は王となる。
「…もう、いい加減…ご自分が王だということを自覚してください」
ドクン
「…え?」
風が俯き、静かに喋りだす。
「花蘭様の下の者たちに対する思いやりは、大変有り難いことです。しかし、あなた様は王です。王様をお守りするのが我々、護衛兵の務めでございます。その守るべき対象を、わざわざ危険な場所に連れて行けるとお思いですか?」
ドクン
「っ…」
ドクン
風に当たり前のことを言われ、言葉を失う。
「…西国との縁談話は、この国にとって有り難いお話です。この国の未来を、お考えください」
ドクン
「…」
ドクン
この国の未来ー…
私の未来ではなく…
この国の未来ー…