姫は王となる。
「…風は、私が西国の王子と結婚した方が良いと思っているのか?」
さっきとは違い、とても落ち着いた声で風に聞いた。
一瞬だけシー…ンと、静まり返り…
「もちろんでございます。王様」
風は表情ひとつ変えずに言い、膝まつき頭を下げた。
「…」
王に忠誠を誓う姿勢で言った風の言葉に、嘘偽りがないことがわかる。
「…そうか」
こんな感情が入らない声が出るのかと、自分で自分の声に驚いた。
「…下がれ」
「はっ。失礼致します」
風は立ち上がり深く頭を下げると、背を向け扉に向かって歩き出す。
その後ろ姿をしばらく見ていたが、風は一度も振り返りもせず王室から出て行ってしまった。
パタンー…
静かに閉まった扉の音だけが、耳に響いた。