姫は王となる。
手からコーヒーカップが滑り落ち、床にバラバラに破片が散らばった。
「王様、お怪我は?大丈夫ですか?」
老婆が素早く膝まつき、私の手のケガを確認している。
「…」
カイトが言っていることが正しければ、風はそのことを知っていて、国境の境界線に行ったのか?
私には、時間の問題と言いながらー…
「…知っていたのか?老婆」
目の前で、コーヒーカップの破片を片付けている老婆に向かってそう聞いた。
すると、老婆の手がピタっと止まった。
「知らなかったのは、私だけと言うことか?」
怒りと悲しみ、王でありながら知らなかった恥ずかしさ…色んな思いが重なり、身体が震える。
「知らなかったのは私だけかと聞いている!!」
バン!!
ソファーの手を置く場所を、力強く叩いた。