お日様のとなり

人目を気にせず着替えが出来たのは良いけれど、外から見えないということは、窓がないということで。

窓がないということは、風が全く通らないということで。

中はまるで蒸し風呂のように暑い。

「あの、イチくん……」

テントから手を出して、イチくんのズボンの裾を引っ張る。

すると相当驚かせてしまったようで、肩を跳ね上げたイチくんはムッとした声で「なんだよ。出てくんじゃねーよ」と返事した。

「ごめん、でも、暑くて死にそう……」

「えー……」

苦し気な声でイチくんに助けを求めると、イチくんは頭を抱えて悩んだ末……。

「あー、生き返った」

足元にタオルを掛けるという条件で、入り口に掛けていたシートを外してくれた。

それにしても、自分は人の前で堂々と服を脱いでおいて、どうして私は足すら出しちゃダメだんだろうか。

そんなに見苦しいのかな……。

さっき聞いてみたけど、大きな溜め息が返ってくるだけで、何も答えてくれなかった。

イチくん、暇そうだな。
そこ、暑そうだし。

せめて一緒にテントに入れば良いのに、イチくんは私に背を向けて砂浜に座ったままじっとしている。

服がないからここにいるのかな。

でも海パン一つで砂浜をウロウロしている人なんて、さっきから大勢いるけれど。

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