お日様のとなり
「ねぇイチくん」
私より広い背中に、一つ声をかけてみる。
けれど返事はない。
「イチくんってば」
そんなに私と話すのが嫌なのだろうか。
さっきは砂浜であんなに楽しかったのに。
一方的に声をかけていると、ふと初めて会った時のことを思い出した。
あの時と比べてみると、今の状況は立場が逆になるのかな。
いやでも、私は無視まではしなかったはず……。
そしてしつこくもう一度、イチくんの名前を呼ぶ。
こうなったら返事をしてくれるまで何回だって連呼してやる。
「イチくんイチくんイチくんイチくん」
あまりにも反応がないので、横から覗き込んでみることにした。
けれど私は、イチくんの顔を見てすぐに後悔することになる。
どうしてもっと早く気付いてあげられなかったんだろうって。
「い、イチくん……!」
太陽に当たりすぎたイチくんは、日射病になってしまっていたようで、顔を真っ赤にして項垂れていた。
頬が沸騰したように熱い。
肩も背中も真っ赤に焼けてしまっている。
脇に腕を入れて力を振り絞り、なんとかテントの中まで引っ張りこんだ。
「イチくん……」
傍で名前を呼んでみると、小さく反応があることにホッとする。
けど、このままじゃダメなことくらい医療に詳しくない私でもなんとなく分かった。