お日様のとなり
テントから出るなってイチくんにはきつく言われていたけれど、それどころじゃない。
救護室の側面に設置されていた水道を発見して、膝に掛けていたタオルを濡らした。
急いでテントに戻り、イチくんの頬や額を冷やす。
けれどすぐに温くなってしまうので、私は水道とテントを何往復もしてそれを繰り返した。干していたキャミソールやその他にも使えそうな布類を片っ端から濡らして、イチくんの真っ赤になった部分に当て交った。
それでもまだ苦しそうなイチくんの表情に、不安で堪らなくなる。
私は首を振った。
先輩たちはきっとまだ戻らない。
ここには私しかいないんだから、私がしっかりしないと……。
あとは何が出来るのか、必死に頭を働かせて考えた。
お水も飲ませた方が良いよね。
飲めるかな……。
イチくんの頭を膝に乗せて、頭を高くする。
残っていたペットボトルの飲料水を口に当てると、なんとか飲んでくれた。
荒くしていた呼吸も落ち着いて、顔色もだいぶ良くなってきた。
それから少しして、薄目を開いたイチくん。
「……あ、れ……?みあ……?」
掠れた声で名前を呼ばれた。
イチくんが、私の名前を呼んだ。
たったそれだけのことに、その瞬間、私の中で何かが弾けた。