お日様のとなり

イチくんの頭を膝に乗せたまま、静かな時間が流れた。

そっと目を閉じると、波の音が耳に心地良く、優しい風が頬を掠めていく。

誰かがテントの前を通り過ぎたのか、何人かの男の人の声が聞こえて、それは次第に遠くなっていく。

イチくんが身体を起こしたので、私は目を開けた。

「イチくん、もう起き上がって大丈夫なの?」

「大丈夫じゃない、って言いたい所だけど。そうは言っていられなくなった」

また、意味の分からないことを言う……。

イチくんはテントを出ると、干していた服を一枚持って戻ってきた。

「みあ、これ着て。あと、キャミソールが乾くまで髪も下ろしておいて」

「うん……」

別に、このままでも寒くないんだけどな。

言われた通り、水着の上からシャツを羽織る。

そういえば、髪はイチくんを介抱するのに邪魔になるから、後ろで一つに結んでいたんだった。

海水を浴びてバシバシになってしまった髪は、下ろすと広がって見栄えが悪い。出来ればこのまま結んでおきたいところなんだけど。

「お願いだから、言われた通りにして。みあのそんな姿、他の男には見られたくないから」

それって、言い換えればイチくんになら見られても良いということだろうか。

見るに堪えない姿なのなら、私はイチくんにこそ見られたくはないのだけれど。

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