お日様のとなり
「なんか、ごめん」
控えめな声で話すイチくん。
私は、顔を隣に向ける。
「みあに楽しんでもらいたくて海まで連れて来たのに、服濡らすし、俺こんなんなっちゃうし。俺、みあに迷惑ばっかりかけてる」
「迷惑なんて……」
そんなことはない。
イチくんはいつだって私のことを見てくれて、一緒にいる私に何度も笑いかけてくれた。
こんな経験、イチくんと一緒に海に来ていなければ出来なかった。
「確かに、今日海に来て、いろんなことがあったね」
指折り数えて、一つ一つ思い返してみる。
待ち合わせ、電車、初めての一眼レフカメラ。
迷子のふうちゃんに出会って、変な気持ち悪い虫を見つけた。
海で子どもたちとも遊んだ。
大変なこともあったけど、迷惑だなんて1ミリも感じてない。
むしろ……。
「私、一日がこんなに楽しいの初めて」
一日を何もすることなく時間が過ぎるのをただ待つのが苦痛だった。
でも、それが私にとっての日常だった。
こんなにたくさんのことが出来るだなんて知らなかった。
だから、ね。
「遠征だなんて言いながら、本当は私のために海に行こうって言ってくれたんだよね?」
「それは、まあ、そうだけど……」
合った目をすぐに逸らして、イチくんはそっぽを向いた。