お日様のとなり
「嬉しい。こういう時、人は普通笑うんだろうけど……ごめんなさい」
やり方がわからない私は、下を向いて唇ときゅっと結んだ。
イチくんはそんな私の頭にぽん、と手の平を乗せる。
「無理に笑おうとしなくていいよ。だから、そんなこと言うな」
「……っ」
イチくんの優しさが手の平から痛いくらいに伝わってくる。
私はそれ以上、何も言うことが出来なかった。
「みあが今日撮った写真見せてよ」
「え……」
突然の提案に固まってしまう私。
「い、嫌だ」
「は?なんで?」
即答で断る私を見て、眉根を寄せるイチくん。
だって、今日の私の収穫といえば酷いの一言。
とりあえずで撮ったフナムシの写真に、波打ち際のタイミングを逃したただ湿っただけの砂浜の写真、それに森園先輩の隠し撮り。
そんな写真ばかりだというのに、とても「いいよ」と胸を張って見せられない。
「じゃあ、勝手に見るからいい」
テントの奥に置いてあるカメラに手を伸ばすイチくんを、私は全力で止めにかかる。
「ダメダメダメダメ……!」
「ちょ、その恰好でくっつくなって!」
「だってダメだって言ってるのにイチくんが」
そんなことをやっていると。
「あーあ。2人っきりにしておいたら、やっぱりこれだよ……」
買い出しから戻ってきた真央先輩がテントの前に立っていて、呆れ顔で私とイチくんを見下ろしていた。