極上御曹司に求愛されています
二十時を過ぎているロビーには、大勢の人がいた。
海外からの客も多く、聞き慣れない言葉が耳に入る。
ホテルを利用する機会がほとんどない芹花はロビーを興味深げに見回した。
「あ、あの人、杏実が大ファンの俳優さんだ」
ロビーの片隅に、長身でスタイルがいい男性が立っていた。
数人のスタッフらしい人が彼をガードしていて、さすが芸能人というオーラに包まれている。
「さすがアマザンですね。芸能人もいるし、さっき、テレビで見たことがある政治家……えっと、生方隼人さんも通り過ぎていきました」
興奮している芹花を、悠生はクスリと笑った。
「さっき、オリンピックのメダリストもすれ違ったぞ」
「え、どこですか?」
芹花は声を弾ませ辺りを見回すがそれらしき人の姿はすでになく、がっかりした。
「あ、竜崎楓だ。背が高くてキレイ……写真で見るより断然スタイルもいい」
「ん?」
「ほら、竜崎楓です。撮影でもあったのかな」
芹花はワクワクしながら次第に近づいてくる女性を見つめた。
間違いない、モデルの竜崎楓だ。
最近、フランスの高級ブランドのモデルに選ばれ、大きな話題を呼んだ。
北海道出身の三十歳で、整った目鼻立ちと九頭身というモデルとして恵まれた容姿だけでなく最高学府の医学部卒業という才媛ぶり。
最近マスコミでも多く取り上げられる美女が目の前に現れ、芹花は彼女から目が離せない。
「わあ、こっちに来る。今日はアマザンに泊るのかなあ、やっぱり人気モデルだもん、そうだよね」
芹花は興奮し、意味なく言葉を口にする。
「悠生さんも、竜崎楓のことなら知ってますよね」
芹花はふと悠生を見上げた。上気した顔の芹花とは対照的に、悠生の表情は硬い。
「……悠生さん?」
「楓」
芹花の声が聞こえなかったのか悠生は何も答えず、ただひと言そう呟いた。