極上御曹司に求愛されています

よっぽどお腹が空いていたんだなと、芹花は小さく笑った。
銀行員らしい濃紺のスーツは見るからに上質で、椅子に置いたブリーフケースは事務所の弁護士たちも愛用するイタリアの老舗ブランドの物だ。
上品で艶のある皮が高級感をいっそう強く醸し出している。
そして木島の左手の手首にあるのはスイスの高級腕時計。
航空時計が有名なブランドのもので、その中でも宝石が施されていない落ち着いたモデルだ。
銀行員という職業柄、華美でないものを選んでいるのかもしれない。
芹花自身はそんな高価なものに縁はなく、とくに欲しいわけではないが、ベテランの弁護士の中には身に着けるものすべてにお金と気を使っている者も多く、見る目と知識が養われていく。
木島が身に着けている物はどれもお高くて芹花には手が出ない物ばかりだ。
木島本人の見た目も整っていてまさに高級仕様。
ほんの少し言葉を交わしただけだが、人当たりの良さと優しい笑顔は女性にもてると簡単に想像できる。
自分とは住む世界が違う人だと思った途端、芹花の心は何故か沈んだ。


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