極上御曹司に求愛されています
「芹花ちゃんの好きなマロンケーキを焼いたから、食べてみて。明日のランチのデザートに出そうと思ってるのよ。味はどうかしら」
千奈美の明るい声とともに、芹花の目の前にコーヒーとマロンケーキが置かれた。
「わあ、マロンケーキ、久しぶりですね。千奈美さんのケーキはどれもおいしいから、嬉しい」
「そろそろ栗の季節も終わっちゃうからたっぷり食べてね。そうそう、芹花ちゃんのイラスト集が発売されたら、芹花ちゃんがご飯そっちのけで食べちゃうザッハトルテを作ってお祝いしましょうね」
「やった。ザッハトルテ」
芹花は目を輝かせた。
マロンケーキも大好きだが、食べ物の中で一、二を争うほど大好きなザッハトルテを想像して頬も緩む。
「千奈美さんのザッハトルテ、大好き。イラスト集の中にも私が黒板メニューに描いた絵があるんです。二月のバレンタインに合わせて描いたけど……えっと」
芹花はさっきまで見ていたイラスト集をきょろきょろと探した。
すると、木島の手元にあるのに気づき、手を伸ばした。
「あ、これ? 悪い悪い」
芹花の動きに気づいた木島がイラスト集を手に取り、芹花に渡そうとした。
その時、木島の手が水が入ったグラスに当たり、グラスはガシャンと音を立てて倒れてしまった。
「あ、まずい」
グラスに残っていた水がカウンターに広がり、木島は慌ててイラスト集を持つ手を上にあげた。
そのおかげでイラスト集は濡れずに済んだが、カウンターに置いていた芹花のスマホが水浸しになってしまった。