極上御曹司に求愛されています

「芹花ちゃん、大丈夫?」

 千奈美が倒れたグラスを片づけ、布巾でカウンターを拭く。

「はい。グラスが割れなくてよかったです。あ、すみません。閉店してるのに仕事を増やして」

芹花は頭を下げて恐縮する。
木島も「すみません」と口にした。

「いいのよ。ケガがなくてよかったわ。だけど、スマホがないと不便ね。お仕事とか大丈夫かしら」
「大丈夫です。明日はお休みなので、午前中のうちにショップに行ってきます」

四年ぶりの機種変更だ。
今のスマホはかなり進化しているだろうと想像して、芹花はワクワクする。
駅前のショップは何時から開いているのだろうかと考えていると、しばらく考え込んでいた木島が口を開いた。

「俺に、スマホを弁償させてもらえないか?」
「え? 弁償?」
「ああ。俺の不注意でスマホがダメになったんだ。弁償させて欲しい」

木島は芹花の隣のスツールに移動し、彼女に向き合った。

「明日、一緒に店に行くから、好きなスマホを選んでくれ」
「いえ、弁償なんて、気にしないでください」
「普通、気にすると思うけど」
「え……」

キッパリとした言葉で迫る木島に、芹花はそれ以上何も言えず口ごもる。
あっという間に距離を詰めた木島の勢いに気圧され、おまけに目の前には端正な顔。
強い意志を含んだ切れ長の目で見つめられれば息が止まりそうにもなる。



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