極上御曹司に求愛されています

「とっとと結婚って、言った?」
 
芹花はもぞもぞと体を起こし、悠生の顔を見上げた。
聞き間違いでなければ、芹花と悠生の結婚ということなのだろうが、芹花にプロポーズされた覚えはない。

「私は、いつ悠生さんと結婚することになったんでしょうか?」

いたたまれない思いと期待する思いとがごちゃ混ぜになった複雑な気持ちで芹花は問いかけた。
付き合いを決めた時点で、いつか悠生と結婚できればいいと芹花は考えていた。
悠生の生まれや立場を考えれば簡単に実現するとは思っていないが、努力は得意だ。
悠生に見合うだけの自分になる努力を重ね、いつか悠生と結婚したいと漠然と考えていた。
そう、決して今すぐというわけではなかったのだが。

「悪いな、芹花。俺はお前と結婚するって決めてるんだ」
「お前……って」
 
芹花を初めてそう呼び、深い黒に変化した瞳は、これまで見せられたことのないものだった。

「だけど、今すぐには結婚できない。だから、こうして芹花に来てもらったんだ。本当にいい迷惑だよ」
 
投げ捨てるような口調でそう言うと、悠生は目の前の家族を小さく睨んだ。
芹花を抱きよせた手は、もちろん緩むことはない。
愛しい男に抱きしめられればもちろん嬉しいが、ここに来てから、というより、今日一日、自分に関係していることが、自分の知らない場所で決まっていくように思え、芹花は不安でいっぱいになる。
黙り込んだ芹花に気づいた悠生は、優しく彼女の背を撫でる。

「芹花さん……大丈夫かしら」
 
緑の心配する声がその場に響くと、成市も「芹花さん、申し訳ないな。だけど、仕方がないんだ」と言って芹花を気遣った。
途端、悠生は成市に厳しい視線を向け、それ以上何も言わないように制した。

「なあ、芹花。俺と楓が俺のマンションから一緒に出てくる写真が週刊誌に載るだろう? 今日、三井先生に見せられたあの写真だけど」
「うん」
 
芹花にとっては衝撃的な写真だった。
美男美女の二人が仲良く悠生のマンションから出てきたところを撮られた、思い出したくない写真だ。
芹花は記憶を振り払うように強く頷いた。
芹花のつらい気持ちを察したのか、悠生の表情も硬い。

「あの写真、撮られたんじゃなくてわざと撮らせたんだ。記者がマンションの周りを張っているのは知ってたからな」
「え? 撮らせた?」
「そうだ。楓と相談して、わざと撮らせたんだ。写真をよく見ればわかるけど、楓はバッチリと化粧してお気に入りの表情を作ってる。それに何が楽しいのか、宣伝もついでにするとか言い出して、着ている服はすべて専属契約を結んでるブランドの新作。おまけに正面よりも左側から撮られたいと言ってその辺も計算済み。見事に自慢の左側からの写真を撮られてご満悦だ」
 
悠生は呆れたようにそう言って、肩をすくめた。

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