極上御曹司に求愛されています

現職の国会議員、生方隼人三十四才。
総理経験がある祖父と、当選回数が十回以上の国会議員を父に持つ政界のサラブレッドだ。
もともとは勤務医として大学病院で働いていたのだが、病に倒れた父の地盤を引き継ぎ、国会議員になった変わり種でもある。
最高学府の医学部出身ということで、初当選の時にはその事が話題になったが、今では地元のために精一杯働く若手政治家として有名だ。
悠生や慧太と並んでも遜色のない見た目の良さも相まって、政治に興味はなくても生方隼人のことは詳しいという女性が増えている。
この間の新聞の特集で、いっそう彼の知名度は上がったようで、来年の選挙では再選確実だろうと言われている。

「ニュースや新聞で見る程度で生方さんの名前は知っていたけど。それがどうかしたの?」
 
突然どうしてその名前を聞かされたのか芹花にはよくわからないが、そう言えば、と思い出した。

「アマザンで模擬挙式を見たあと、ロビーで生方さんを見かけました。混んでたけど、背が高くて目立ってたから覚えてます」
 
長身だからだというわけでない、その場に放つオーラのようなものが感じられて、目が留まったのだ。
政治家という、周りからの評価によって活動の方向性すら考えなければならない立場にいるにも関わらず、歩み去る後ろ姿でさえ凛々しくて、周囲の雑音にかき消されない強さを感じた。
きっと、それが彼のオーラの源なのだろう。
自分とあまり変わらない年齢だというのに、成長度合いがまるで違うと、ほんの一瞬見かけただけで感じてしまった。

「新聞の特集記事も読んだけど、同世代として見習いたいなって思えることが書いてあったな……。あ、もちろん悠生さんも慧太先生も同じだけど」
 
芹花が慌てて最後に付け足した言葉に、悠生は苦笑した。

「まあ、たしかに実際に会えばもっといいオトコなんだけどさ。で、その生方さんが、楓の恋人なんだ。アマザンで生方さんを見かけたのも、あの日楓と部屋で会うことになっていたからだ。そして、生方さんは俺と同じマンションに住んでる」
「え、恋人っ? 全然、知らなかった」
 
素っ頓狂な声を上げた芹花に、その場にいた皆がくすりと笑った。
その笑い声が耳に入り、芹花は自分一人がそのことを知らないのだと察して何故か落ち込んだ。


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