極上御曹司に求愛されています


「生方君が元総理の生方陽人の孫だというのは知っていると思うが。生方陽人は、引退した今でも政界には大きな力を持っているんだ」
 
やわらかな表情にそぐわない強い口調に芹花はハッとし、姿勢を正した。
その場の空気も一瞬で冷えたようだ。

「経済界への影響力は大きいし、彼の言葉ひとつで株価が大きく変わるというのは都市伝説でもなんでもない、事実。だから、生方陽人の意に添わない仕事を進めようとすれば痛い目にあう」
「それって、自由に仕事ができないってことですか? おかしいような気がしますけど。……あ、すみません、生意気なことを言ってしまいました」
 
成市の言葉から、かなり独裁的で横暴な男性をイメージしてしまい、思わず反抗的な言葉が口を衝いて出た。
微妙に表情が変わった成市を見て、芹花は体を小さくした。

「いや、そう思っても仕方がない。だけど、生方さんが言う事はたいてい正しいんだ。事業を広げようとして無理に銀行から金を借りようとしている企業があれば、その銀行に融資しないよう口を出すし、経営が立ち行かなくなった中小企業には、自分の息がかかったコンサルタントを送り込んで同業同士の合併を仕組んだこともある。その結果はすべて吉と出ている。他にも話せばきりがないほど生方さんの功績は多いんだ」
「すごい方なんですね……」
 
芹花はアマザンで見かけた生方隼人を思い出した。
あの凛々しい佇まいは、政界で大きな力を持つ祖父を絶えず意識してのものなのかもしれない。
立場もレベルも違うが、芹花は優秀な家族を持ったことで背負うプレッシャーと重荷を理解できるようにも感じた。
隼人にとっての祖父は、芹花にとっての杏実であり、きっと、悠生にとっての愼哉でもあるのだろう。


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