極上御曹司に求愛されています
「兄さんは、普段はクールにしてるけど、ああ見えて千春さんにベタ惚れなんだ。大学時代から付き合っていて、木島グループを守るのは、千春さんを幸せにするためだと平気で言うんだ。あの落ち着きに皆騙されてるけど、兄さんの生きる基準は千春さん。それ以外はどうでもいいんだ」
「へ、へえ……」
芹花はいっそう千春のことを羨ましく思いながら愼哉を見る。
表情を崩さず落ち着き払っているが、その胸の内は熱く、妻への愛情でいっぱいなのだろう。
「俺も、木島の男だから、兄さんのことは言えないんだけどな」
悠生はそう言って、いったん離していた手を、再び芹花の体に回した。
「え、あ、だめ。お父さんとお母さんがここにいるのに、恥ずかしい……え?」
突然悠生に抱き寄せられた芹花は、真面目な話をしている最中だというだけでなく、悠生の両親を気にして悠生の胸の前で手を突っぱったのだが。
「ねえ成市さん、難しいお話はもういいでしょう? 悠生が芹花さんにちゃんと説明するはずだもの、お食事にしましょうよ。だけど、その前に成市さんと手を繋いで二人きりでお庭を歩きたいわ」
成市の膝に手を置いて甘える緑の姿に、芹花は口を開いたまま呆然とした。
「ああ、そうだな。面倒な話は終わりにしよう。悠生が今更文句を言っても、もう決まったことだし動き始めたんだ。どうすることもできないさ」
「あ……あ、あれ?」
どういうことかと悠生を見れば「気にするな、あれがあの二人の日常だ」と言って、突っ張る芹花の手を掴み、そのまま抱きよせた。
「じゃあ、夕食まで俺たちは茶室にでも行ってるから。今回のことも説明して、納得させてくる」
悠生はそう言って、芹花を抱えたまま立ち上がると、その場に成市や愼哉たちを残し、部屋を出た。
芹花は足をもつれさせながら悠生について歩くが、訳が分からない時間が長すぎたせいで思考能力は限界を超え、今にも爆発しそうだった。