極上御曹司に求愛されています

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悠生が住むマンションから徒歩圏内にある二階建てのマンションは、全戸四戸の豪奢な造りだ。
木島家が所有する土地の税金対策のために最近建てられたのだが、重厚なコンクリートの建物はまるで要塞のようで、セキュリティー対策は万全だ。
敷地を取り囲む塀は、見上げるほど高くどこまでも続いていて、芹花は悠生の実家である本家よりも防犯対策がとられているように感じた。
その建物の二階一番奥の部屋に芹花は連れてこられたが、百㎡以上はあるに違いない部屋に入った途端、回れ右をして帰りたくなった。
芹花の反応をあらかじめ予想していた悠生は「なにも考えずにさっさと入る」と言って芹花の背中を押した。
悠生に促されるまま無言で部屋に入った芹花は、既に家具や電化製品が揃っている室内に驚いた。

「最近建てられたって言ってなかった?」
 
新築の部屋だと聞いていたせいで、これから必要なあれこれを用意しなくてはいけないと芹花は思っていたが、その心配は杞憂に終わった。
広いリビングは淡いピンクと白でまとめられ、猫足のソファやレースたっぷりのクッション。カーテンもすでにかかっていた。ガラステーブルの上に置かれた花瓶には、赤と紫のバラが溢れるように活けられている。

「母さんだな……これ、何から何まであの人の趣味。寝室もなにもかも、少女趣味で統一されてると思う。しばらくの間ここに芹花を住まわせるって決まったあとすぐにそろえたんだろうけど、それこそ百貨店の担当が総出で動いたはずだ」
 
ため息を吐いた悠生に、芹花はかぶりを振った。

「とても可愛らしい部屋で、嬉しいです。少女趣味というよりかわいらしいものが好きなんですね。私には似合わないと思ってなかなか手に取ることもなかったけど、わくわくします」
 
興奮した声できょろきょろと辺りを見回す芹花に、悠生はホッとした表情を見せた。



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