極上御曹司に求愛されています
「明日週刊誌に俺と楓の記事が出たらマスコミに追いかけられるだろうから、当面はここで暮らして欲しい。こういう時のために父さんが建てたんだ。盗撮や盗聴もまず無理だし、二十四時間、一階の玄関には警備員が立つから安心なんだ。まあ、芹花よりも、俺の方が追いかけられると思うけど、慣れてるから大丈夫だ」
「うん……。でも、私を追いかけても大したネタにならないと思うけど」
木島家に勧められるがままこのマンションにやって来たが、冷静になれば、悠生や楓のように知名度もあるならまだしも、一般人である自分が住まいを移してまでマスコミから逃げる必要はないのではないかと、芹花は首を傾げる。
「それに、悠生さんは楓さんと付き合っている振りをするんでしょう? だったら私との写真が週刊誌に出ても、誰も信用しないと思う。誰だって、私より楓さんの方が悠生さんにお似合いだって思うだろうし……」
芹花はそう言って俯いた。
悠生の実家で食事をする直前、茶室で悠生から聞かされたことは、何度思い出しても芹花には信じられないものだった。
悠生のマンションに入っていく楓の写真がマスコミに撮られたが、実はそれは悠生を訪ねたわけではなく、楓の恋人の生方隼人に会いに来ていた時の写真だった。
悠生も同じマンションに生方隼人が住んでいることは知らず、楓が出入りしていることにもそれまで気づかなかった。
最近注目されている悠生の写真を撮ろうと、記者はマンションの近くでカメラを構えていたが、楓の姿を見た瞬間、以前楓が悠生と噂があったことを思い出した。
そして、二人が今もつきあっていると勘違いして、記事にしたのだ。
女性に人気のある御曹司と超有名モデルの恋。
これは話題になるに決まっていると、しっかりとした裏をとらずに早々に記事にされたことは、結局のところ楓と生方隼人を助けることになった。
もしも生方隼人が同じマンションに住んでいることが明るみに出れば、楓の恋人は悠生ではなく生方隼人かもしれないと探られていたかもしれない。