極上御曹司に求愛されています

悠生にしてみれば、楓は昔の恋人ではあるが今では単なる友人のひとりであり、芹花という恋人もいるのだ。記者に囲まれれば楓との仲を否定するに決まっている。
そうなれば、いずれ生方隼人の存在が浮上し、楓との関係も明るみに出るだろう。
生方隼人は楓との結婚を望んでいて、マスコミにばれてもいいと覚悟を決めているのだが、所属する党や、地元の講演会、そしてなにより生方陽人がそれを許さない。
いずれは総理大臣になってもおかしくないと言われている若手有力議員だ、結婚相手には政略的な思惑が絡み、本人の意思は後回し。
そんな中で楓との関係が明るみに出れば、すぐに二人の関係は潰されるはずだ。
おまけに来春には選挙が控えていて、それまでスキャンダルを起こさないよう、周囲は神経質になっている。
今楓との記事が出れば、再選できるのかどうか微妙になってくる。
楓も生方隼人が政治家として大成することを願っていて、いずれは彼を支える覚悟をしているが、今はまだ結婚できる状況ではないことはわかっている。
それに、モデルの仕事をすぐに辞めることもできない。
だから今は、悠生と楓が恋人関係であるとマスコミに思わせ、生方隼人との存在を隠すことにしたのだ。
楓と生方隼人の二人で考えたこの案は、生方家にすぐに伝えられ、生方家から木島家への依頼として早々に伝えられた。
生方隼人は、来年の選挙で再選を果たせば楓との関係を公にし結婚するとも陽人に伝え、もしそれを受け入れなければ政界を引退すると宣言した。
もともと医師としてやりがいを持って働いていたのだ、なんの未練もないときっぱりと言い放った隼人に、陽人は頷くより他なかった。
それに、考えてみれば、同性からの好感度が高い楓との結婚は、女性票獲得につながるに違いない。
陽人は隼人の願いを聞き入れ、同時に木島家に借りを作った。
木島家にとっては、経済界に大きな影響力を持つ生方陽人に貸しを作ることは大きな意味を持ち、今後それを利用できることもあるはずだ。
成市と愼哉はすぐにその依頼を受け入れ、悠生を説得した。
話を聞いた悠生はその身勝手な依頼に反発したが、子供の頃から家業を発展させることの大変さを見てきたせいか、自分の力や意思ではどうしようもないことが世の中にはあると、わかっている。
それは、自分がその申し出を受け入れれば、生方陽人の力が働き、木島グループに好影響をもたらすこともあるだろうということだ。
何万人もいる社員とその家族の存在を考えれば、自分だけの感情だけで動けるわけがない。
芹花に苦しい思いをさせるとわかっていても、受け入れるしかないのだ。

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