極上御曹司に求愛されています
「それに、その血筋と財産のせいで、こんな面倒なことに巻き込まれたんだ、おまけに芹花も道連れ。……御曹司なんて面倒なだけだ」
胸にひっそり隠していた思いなのだろう、最後の言葉はとても重い。
「悠生さん……」
「あ、悪い悪い。いつもこんなことばかり考えてるわけじゃないし、もう折り合いはつけてるから、気にするな」
息を詰め、様子をうかがっている芹花に、悠生は笑顔を向けた。
「なにも自分の立場を悲観してるわけじゃない。ただ面倒なことが多くてやってられないってだけ。芹花と人前でいちゃつくこともお預けだし」
一転、明るい声をあげる悠生に、芹花は顔を赤くする。
「人前でいちゃつくなんて、しません」
「そんな残念なこと、言うなよ。これから半年、それを楽しみに乗り越えようと思ってるんだ。だから、その時は存分にいちゃついて、マスコミに見せつけてやろうな」
芹花の顔を覗き込み、悠生は悪だくみをする子供のように笑った。
芹花は人前でいちゃつくなんて、絶対にできないと思いながら苦笑するが、悠生の両親や兄夫婦の甘く親密すぎる様子を思い出せば、悠生からは逃げられないのかもしれないと思った。
「御曹司に生まれて良かったとは思わないけど、仕事は好きだし木島家が背負う責任を果たすことにためらいはないんだ。兄さんの代わりにすべてを背負ってもいいくらいに思ってる。それに、芹花と出会えたのはこうして今の立場に生まれたからだろうし」
悠生は照れることなくそう言って、芹花の頬をすりすりと撫でる。
男性にしては細く長い指先が優しく動き、すっと芹花の唇に触れる。
「俺、いちゃつくどころか、芹花となら人前でキスもできそうだ」
軽やかにそう言いながらも、芹花に向ける瞳は真剣で熱がこもっている。
芹花は瞬きすら忘れて見つめ返した。
「……かわいいな、芹花」
「また、そんなこと言ってる」
何度も悠生からそう言われ続け、芹花は本当に自分がかわいいのではないかと錯覚しそうになる。
そのたび、女性からの人気が高い悠生のことだから、言い慣れているはずだと、本気にならないようにしている。
「悠生さんも、格好いいです」
ふふっと笑う芹花に、悠生は「当然」と答えた。
束の間見つめ合えば、芹花は悠生の瞳に自分の姿が映っていることに気づいた。