極上御曹司に求愛されています
「あれ、私って……」
芹花は笑顔を浮かべているつもりでいたが、その姿はとても寂し気で弱々しい。
それは悠生と芹花が置かれている今の不安定な状況を象徴しているように思えた。
『お二人には本当に申し訳ないけど、半年だけ、悠生を貸してください。お願いします』
芹花は、悠生の実家にいた時にたまたま楓が悠生にかけてきた電話に出たが、電話越しにそう言って泣いていた彼女を思い出した。
木島家の茶室で悠生から聞かされたことは衝撃的で、芹花は受け入れられないと思ったが、いつも毅然としている印象の楓の涙声に、芹花の心は揺れた。
楓と生方隼人の事情はよくわかるが、やはり悠生と楓が恋人同士のの振りをするのは嫌だった。
芹花の気持ちなど後回しにされているのはわかっていても、やはり受け入れがたく、拗ねていた。
それでも、結局は楓の願いは彼女だけの願いに留まることはなく、国内の経済を動かしていると言っても過言ではない生方家と木島家、双方が下した決定事項となり、今日悠生の実家で芹花に伝えられたのだ。
これから半年間、悠生が楓と付き合っているとマスコミに思わせることを納得して欲しい。
食事の最中、芹花が成市からそう言われた時にはすでに、マスコミへの対策が練られ、悠生と楓が定期的に二人で食事をすることや取材を受けた時のコメントについてまで決められていた。
はっきりと付き合っていると口にすることはないが、曖昧に濁し、熱愛関係ではないかと思わせる。
そうして二人の関係を強調し、生方隼人の名前が表に出ないようにするのだ。
そこまで決められてしまえば、芹花が納得するかしないかのレベルの話ではなく、話は経済界と政界をも巻き込んだものとなっていた。
もう、受け入れるしかなかった。
その面倒な計画と引き換えに、悠生は芹花との結婚を成市に認めさせたのだが、木島家の男性は皆、ひとりの女性をとことん愛し、決して手放さない。
悠生が芹花を選んだのならば、たとえ木島家当主の成市が反対しても悠生の意を覆すことは不可能だ。
それどころか、悠生に捕まってしまった芹花がこれから味わうに違いない束縛と溺愛に耐えて欲しいと、テーブルに着いていた皆が願ったほどだ。
その後も続いた食事だが、訳が分からないまま騒ぎの渦中に放り込まれた芹花を、木島家の面々は悠生の婚約者だ認め、盛大にかわいがった。