極上御曹司に求愛されています
「どうした? やっぱりこの部屋が気に入らないか? 隣の部屋も空いてるから、いっそ芹花の好みで全部揃えなおしてもいいぞ。無理矢理連れて来られて窮屈な生活をさせられるんだ。好きにしていい」
悠生はそう言って、芹花の不安を取り除くように笑った。
……また笑った、と芹花は思う。
悠生は自分の抱える苦しみを隠し、芹花のことを第一に考えている。
どこまで自分は大切にされているのだろうと、胸がいっぱいになった。
わかっていたはずなのに、ここまで強く愛されていることに改めて気づき、芹花はふっと肩の力が抜けたような気がした。
この状況を全面的に受け入れたわけではないが、明日出るという悠生との記事による騒ぎが収まるまでは、木島家が決めたことに従おうと思った。
ここまで芹花を愛し、守ろうとしてくれる悠生の思いを大切にしたいのだ。
それに、芹花がここにいれば、悠生は安堵し、芹花への不安や遠慮から解放されるはずだ。
芹花は彼女の頬を撫でる悠生の手を掴み、そのまま強く押し付けた。
言ってどうなるわけではないと、わかっていても、どうしても言いたい。
「やっぱり、半年なんて無理です。というよりも、悠生さんが楓さんの恋人の振りをするなんて、我慢できない。楓さんの気持ちとか生方さんの選挙とか、木島家の将来のこととか、そんなのどうでもいい。私は悠生さんが私以外の人と付き合ってるって思われるのが、嫌なんです」
体中が熱い。
思い切り自分の気持ちを口にして、息も荒い。
悠生は目をまん丸にし、呆然としている。
悠生の実家で何を聞かされても、何を見ても文句のひとつも口にせず落ち着いていた芹花が、目いっぱいの大きな声で気持ちを口にしたのだ。
「本音は、そういうことなんです。ほんとは私、自己中でとっても意地悪なんです」
芹花は居心地が悪そうに俯くが、その表情はすっきりしていて、今まで見せていた不安定さも、弱々しさもほぼ消えていた。
けれど、悠生の手を掴んだままの指先は大きく震えていて、芹花にも迷いがあるのだとわかる。