極上御曹司に求愛されています
『ありがたいことに、木島グループは来年創業六十周年を迎えます。長きにわたり弊社を支えてくださった方々に、心よりお礼を申し上げます。これを機会に、というわけではございませんが、来年の株主総会において、社長を次男の悠生に譲るつもりでおります。何分まだ若く、勉強中の身ではございますが、長男愼哉の協力のもと、弊社の更なる発展のために尽力していく所存でございます。今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします』
成市の言葉に、会場は一瞬静まり返った。そして「え、愼哉さんじゃないのか?」というささやきが広がっていく。
芹花も今の発表に呆然としていた。
まさか悠生が次期社長として指名されるとは、何かの間違いではないのだろうか。
三井の強い視線に気づきハッとするが、慌てて首を横に振る。
「私も今知ったばかりで驚いていて。ほんとに何も聞いてないんです」
「そうか。だったら、突然決まったことなのかもしれないな。……だけど、悠生君はかなり向上心が強くて真面目な男だって聞くし、向いてるかもな」
「そうでしょうか。悠生さんはずっと愼哉さんのサポートをするって言っていて。私もそのつもりでいたのに」
芹花は不安気な声で呟いた。
昨夜ずっと一緒にいたにも関わらず、悠生から何も聞いていないことにショックを受けている。
悠生はいつこんな大事なことを決めたんだろう。
結婚を考えているのなら、ひとこと言っておいて欲しかったと芹花は眉を寄せた。
その時、マイクを受け取った悠生が立ち上がり、深々と頭を下げた。
フラッシュが一斉にたかれ、悠生は眩しそうに目を細めたが、落ち着いた様子で話し始めた。
『木島悠生です。来年、父の跡を継ぎ、木島グループの社長となることになりました。長男愼哉ではなく私がその立場に就くことに驚かれている方も多いと思いますが、この決定が、将来の木島グループにとって良いものであるよう、精いっぱい務めさせていただきます。よろしくお願いいたします』
悠生はそう言って再び頭を下げたあと、晴れ晴れとした顔を記者たちに向けた。
なんの不安もないすっきりとした表情からは自信と覚悟が感じられ、芹花は画面越しに「格好いい」と呟いた。
画面に近づき悠生の姿に見とれる芹花の姿に、三井は驚いている。
自分の感情を見せることが少ない芹花がここまで優しい表情をするのは滅多にないことだ。
悠生のおかげだろうが、芹花の保護者のつもりでいる三井はほんの少し傷ついた。
「大丈夫なのか? 悠生君と結婚したら、天羽さんは社長夫人だよ」
「社長夫人……そうなれば、嬉しいんですけど、結婚、本当にできるんでしょうか」
画面から目を離すことなく芹花は答えた。
楓と生方隼人のために、半年間我慢すれば悠生と婚約することになっているが、それは悠生がいずれ木島グループのトップに立つと聞く前の話だ。
状況が変わった今、それはどうなるのだろうかと、不安が募る。
それに、自分にそんな重要な役割が果たせるのか、自信もない。
芹花は答えを求めるように、画面の向こうの悠生をじっと見つめた。