極上御曹司に求愛されています

それからは、安易な気持ちで女性と付き合うことはなく、仕事に重きを置いて生きてきた。
今はグループ内の信託銀行で働いているが、いずれは兄を支えるために、グループで最大の収益を上げている重機器部門に移ることになる。
今の仕事にやりがいを感じているせいで気乗りしないが、兄とともにグループを発展させるためには仕方がないと諦めている。
一見華やかそうに見える御曹司も、現実はそうそう楽しいものではないのだ。

「本当に、ありがとうございます。私、料亭なんて初めてで、かなり興奮してます」

いくつか料理を食べて落ち着いたのか、芹花が姿勢を正して頭を下げた。
ビールを飲みながらぼんやり考え込んでいた木島が、視線を上げた。

「いや、俺も久しぶりに来たかったから、ちょうどよかった。それに、スマホの代金にはまだ足りないくらいだし」
「それはもういいんです。私もしっかり稼いでますから、安心して下さい。とはいっても、こんな高級なお店に自分のお財布で来る機会はないと思いますけど」

ふふっと笑う芹花に、木島も笑顔を返した。
どうしてもスマホの代金を自分で払うと言う芹花を、木島は夕食に誘った。
木島が芹花を連れて来たのは、「志乃だ」という日本料理が有名な店だ。
高級住宅街の中にある、大きな日本家屋の店構えは、その伝統的な佇まいゆえに一見さんお断りという印象を与え、芹花にはまったく縁のない店だった。






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