極上御曹司に求愛されています

木島は部屋と料理を予約していて、店に着けばすぐに十畳ほどの和室に通された。
木島は料理長がその日仕入れた食材で作るおすすめコースを頼んだのだが、次々運ばれてくるおいしい料理に、芹花は感嘆の声を上げ、舌鼓を打つ。
だし巻きだけでなく、香ばしい味噌の風味がただようギンダラの西京焼きや野菜の炊き合わせ、そして彩りがキレイなジュレのおいしさに言葉を失い、牛ヒレの昆布巻きは「ひと口で食べるのがもったいない」と言いながらもひと口で食べ、とろけるうまみに感動していた。
それほど気に入ったのならばと、木島が芹花に自分の牛ヒレの皿を差し出せば、彼女は一瞬悩む表情を浮かべたが、おいしい料理の誘惑には勝てないのか、恐縮しながらももう一皿食べた。

「夕べはおいしいハンバーグを食べて、今日は木島さんにこんな素敵な和食を食べさせてもらえるなんて。本当に幸せです。今月は出費が多かったし来月は結婚式もあるので地味な手料理で過ごさなきゃって思ってたから……あ、すみません。木島さんには関係がないというか……その」

芹花は口を閉じ、照れくさそうに小さく笑った。
酒に強い芹花だが、慣れない高級店での食事に緊張しているのかもしれない。
おまけに目の前にはかなりハイレベルな男性。
多少酔いが回り、言わなくていいことまで口にしても仕方がない。

「よく食べるし、意外と酒に強いんだな」
「ふふっ。ばれちゃいましたね。両親も、強いんです。平日は仕事があるからそれほど飲まないけど、親戚やご近所さんが集まって宴会が始まると、二人は最後まで平気な顔で飲んでて。私もその血を引いてるから強いのかも……って、あれ、ごめんなさい。友達みたいに話しちゃって」

おいしい料理と極上の酒のせいで気持ちが軽くなり、ついつい砕けた言葉でしゃべってしまった。
芹花は熱くなった顔を隠すように俯きながら、手元のグラスに残っていた酒を飲み干した。





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