極上御曹司に求愛されています

「御曹司っていうのは間違いじゃないけど、子どものころはさすがにこういう店にはこない。というより、家族で出かける機会って滅多になかったな」
「え、そうなんですか? あ、この鯛も絶品ですね」

箸を休めず、芹花は視線だけを木島に向けた。
伊勢海老に続き鯛を楽しむ芹花に、木島も楽し気に口元を緩めた。

「ああ。父親は俺が生まれる前にはもう社長として忙しくしていたし、母親はお嬢様育ちでなにもできないまま木島家に嫁いできた世間知らず。父に愛されることが唯一の仕事みたいな感じでさ、今も昔も息子たちは二の次。料理を作るなんてこともなかったし。そんな両親と家族揃って食事に出かけることはなかったんだ。そう言えば」

木島は、思い出したようにくくっと笑った。

「俺の中学の卒業式に母親が来る予定で朝から準備していたんだ。父親第一の母だったけど、俺と兄貴のことも彼女なりにちゃんとかわいがってくれてたし、慣れないながらも世間一般の母親業ってのにもチャレンジしてた。だから、学校行事にもなるべく顔を出してたんだけど」
「……だけど?」

思い出し笑いを続ける木島は、一瞬、口を閉じたあと、肩をすくめた。






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