極上御曹司に求愛されています

両親が食品会社の工場で働いていることから、子どもの頃から食べ物への感謝を忘れず、出されたものは完食することを心がけている。
食への感謝は、一生懸命働いている両親への感謝にも通じるのだ。
どんな状況であれ、目の前にある料理に感謝し、味わい楽しむと決めている。

「一年分の運なんて、大げさだな。そんなに気に入ったなら、また連れてきてやる」
「とんでもない。今日だって、申し訳ないのに」

慌てる芹花に、木島は言葉を続ける。

「本当なら、俺がスマホを弁償するべきなのに、自分でとっとと分割払いの手続きを済まされたら、ご馳走したくなるのも当然だろ」

強い口調の木島に、芹花は首を横に振った。

「十分すぎるほどごちそうしていただいて、申し訳ないくらいです」

芹花は滅多にないこの機会を心から満喫していた。
けれど、障子で閉めきられた和室に木島と二人きり。
ふとこの状況を思い出せば、我に返ったように口数も減る。
どうしてこんな格好いい男性と差し向かいで食事をしているんだろう。
それも、政治家や有名芸能人御用達だという高級店で。

「どうした? 口に合わないものでもあった?」

黙り込んだ芹花の顔を、木島が覗き込んだ。



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