極上御曹司に求愛されています

「あ、あの、どうしたんですか?」

芹花は思わずスマホを両手で覆い、小声で木島に話しかけた。
今日一日、絶えず穏やかな表情と軽やかな会話で芹花を和ませていたというのに、どうしたのだろう。
突然、鋭い眼を向けられ、芹花はおろおろする。
すると、木島は表情を崩すことなく口を開いた。

「結婚。するのか?」
「え?」
「来月、結婚式なんだろう?」

木島は苦々しい口調で問いかける。
芹花は訳が分からず戸惑うが、そういえば今結婚式の話を母親が口にしたなと思い出した。

「あの、結婚するのではなくてですね」

どう説明しようかと考えていると、手で覆ったままのスマホからくぐもった声が聞こえてきた。

『芹花、どうしたの、なにかあったの?』

母親の大きな声に、芹花はハッと我に返った。

「あ、あの、母さん。今ちょっと友達と食事中だから、あとでかけ直してもいいかな。ごめんね」

木島は相変わらず機嫌が悪そうで、芹花は急いでスマホを切ろうとするが、それすらどうすればいいのかわからない。
今度こそ助けてほしいと木島を見れば、小さく息を吐き出し、芹花のスマホに手を伸ばした。
すると、慌てているとわかる母親の声が聞こえる。

『あ、芹花。治美さんから聞いたんだけど、綾ちゃんが披露宴の受付が決まらないって悩んでるらしいの。だから、一度電話してあげて』
「綾子が?」
『そうなの。今日、仕事のあと治美さんと話してたらそう言っていたわよ。綾ちゃん、二次会の幹事も引き受けてるんでしょう? 地元にいないから仕方ないけど、あなた一番の友達なんだから、一緒に考えてあげなさい。いいわね』
「あ、うん……わかった」

芹花は小さな声で答えた。

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