あいつと過ごした時間
俺は、先生が出て行った病室で静かに泣いた。
今までたくさんの事を我慢して来た。
俺なりに頑張って来たつもりだ。
なのに…
今までの事が無駄だったって言われた気分だった。

だから俺は後悔しないように、自分のしたいように生きたいって思った。


ーコンコン


俺は涙を拭き、返事をした。

母さん「こうへい…」

母さんの目は赤くなっていた。
また、俺は母さんを泣かせた。
そして、これからも…


父さん「大丈夫か?」

「ぁあ。」

父さん「なら、よかった。」


しばらく沈黙が続いた。
そして、沈黙を破ったのは俺だ。

「父さん、母さん。話したい事がある。」

父さん「ぁあ。なんだ?」


父さんたちは、パイプ椅子に座った。


「俺、明日退院しようと思ってる。」

母さん「え?」

「ごめん。俺、もうダメみたい。」

父さん「どういう事だ?」

「さっき、赤羽先生に言われた。次今日みたいな発作が起きたら命の保証は出来ないって。だから、入院して治療しようって。」

父さん「じゃあ、入院すればいいんじゃないのか?」


俺は首を横に振った。


「ごめん。例え寿命が短くなったとしても俺は、少しでも長くあいつらと同じ時間を過ごしたいんだ。だから…お願いします。」


俺は頭を下げた。

でも、父さんと母さんは何も言わなかった。

「今までは父さんと母さんの為に生きてきた。隠れて母さんが泣いてるのも知ってた。だから、俺に出来る事は全てやってきたつもりだ。でも最期は自分らしく、自分の為に生きたいんだ。せっかく父さんと母さんの所に産まれてきたんだから。。。父さんと母さんにせっかくもらった人生を後悔したくないんだ。」


父さん「…分かった。自分の思うようにしなさい。。。」


そして、母さんは泣き崩れた。

俺はただ泣いている母さんを見ている事しか出来なかった。


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