触れられないけど、いいですか?
「殆ど覚えてないけど聞いてるだけで恥ずかしい……」

「その後、女の子のもとにはその子の母親がやって来たし、俺も退屈してたから、さくらを追うように公園まで向かったんだ。そうしたら、淡いピンクの綺麗なワンピースが汚れるのも構わないとしながら公園中ハンカチを探してるさくらがいた」




ーー『今日風強いし、そもそもこの公園でハンカチ落としたとも限らないんじゃない?』


ーー『だ、だけどここに落ちてる可能性もあるじゃないですか』


ーー『服、汚れちゃうよ』


ーー『そんなこと気にしません。あの子が泣いてるままの方が嫌です』



「この子は……自分のことには関心がなくて、だけど相手のことを何よりも考える人なのかなって思ったんだ。自己犠牲が良いことかどうかは別問題としても、俺が今まで出会った女の子にそんな子はいなかったから、凄く心惹かれた。そして……」




『……あ! あった、猫柄のハンカチ! きっとこれだ!』

『見付けたの?』

『は、はい! すぐにあの子に届けなきゃ!
……本当に良かった。自分が大切にしているものを失くすのって、辛いですものね……』




「……さくらのその言葉を聞いた時、つい、その時の自分と重なったんだ。自分が好きなものとか、目標にしているものを、父や会社の為に捨てなきゃいけない自分と。
だからその時、さくらに聞いたんだ」




『君にもある? 大切にしているもの』
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