触れられないけど、いいですか?
「本当なんだな?」

黙り込んでしまった私の様子を見て、父が念押ししてくる。

知られたくはなかったけれど誤魔化せそうになく、私は観念して静かに頷いた。


「黙っていてごめんなさい」


心配を掛けたくなかったからとはいえ、ずっと本当のことを言えずにいて申し訳なかったと思う。


だけど父も母も「謝ることなんて何もない」と言う。


「寧ろ、謝らなきゃいけないのは父さん達の方だ。さくらがそんな風に悩んでいることを気付いてあげられなかった。毎日こんなに近くにいたのに。辛かっただろう?」

「お父さん……」

隠していたのは私の方で、父と母がそれに気が付かなかったのは当然なのにそんな風に謝らせてしまい、申し訳ない気持ちと共に、嬉しい気持ちも湧きあがり、思わず涙目になる。
親はいつだって子の味方だ、と改めて感じる。いっそのこと、もっと早く男性恐怖症のことを両親にだけは打ち明けていれば良かったのかもしれない。



「……翔さんのお父様が婚約破棄を申し立ててしたのは、私の男性恐怖症が原因なの?」

恐る恐るそう尋ねると、父はなんとも苦い顔をする。


「……大丈夫だよ。本当のことを知りたいから、話して」

私がそう言うと、父はゆっくりと口を開く。


「……さくらが男性恐怖症だという話は、とある人物から知らされたそうなんだ。それが誰なのかは教えてもらえなかったけれど」

「うん」

それはまず間違いなく優香さんだろうけれど、ひとまず頷くだけにしておく。


「それを聞いて、あちらにも心当たりがあったそうでね。先日、さくらに握手を求めたところ、拒まれたとか」

「あっ……」

それは確かに事実だった。拒否したい訳ではなかったけれど、差し出された手に自分の手を重ねることがどうしても出来ず身体が硬直してしまい、翔君が助け舟を出してくれた……。
< 127 / 206 >

この作品をシェア

pagetop